YZF-R25 ピストン交換
全日本JP250に参戦されるチームのエンジンメンテナンスが完了しました。
このエンジンも激戦を戦い抜いて、よく頑張ってくれました。
こうして何機もYZF-R25のエンジンを見てくると、例えば全日本を1年間6レースを戦うならば、
この時期にフルOH(1回目)、前半戦終わったインターバルで腰上OH(2回目)、
そして後半戦の何処かのタイミングでフルOH(3回目)、それプラス最終戦に向けて腰上OH(4回目)
・・・というぐらいのメンテサイクルが必要になってくるんじゃないでしょうか。
もちろん、その間の練習量が多いとか事前テストの要因が加わると、それ以上という事もありますし、
全日本に参戦している有力チームは、当然のことながら毎戦ごとにメンテすると思います。
それに地方戦に参戦している人ならば、その間に
「耐久レース」という一大イベントがあると、
その前後でメンテしておくか・・・という事にもなりますが、練習量がそれほどでもなく、
【高回転×全開時間】が短ければ、もっとメンテサイクルは伸びると思います。
YZF-R25エンジンの1番のチェックポイントは、このピストン「セカンドランドのアタリ具合」でしょう。
YZF-R25のピストンは、基本的には丈夫な「鍛造ピストン」であることは間違いないのですが、
アルミ素地の上に「Fe鍍金」をかけ、それから錫鍍金をかける凝った造りです。
その錫鍍金が剥がれ、その下のFe鍍金が剥がれると、
アルミダイアジルシリンダーとアルミ素地が直接触れることになるため、一気に焼き付きます。
もちろんそうならないために、そう簡単に剥がれないように鍍金されてはいるのですが、
高温時のオイル被膜が厳しくなっている状態で、高回転をキープする走りを長時間続けると・・・
画像のようにFe鍍金も厳しい状態になってきます。
ピストン裏も良く焼けて、ピストンピンも厳しい状態でした。
それでもトラブルが無かったのは、マメにオイル交換をしてフレッシュオイルでの走行が多かったからでしょう。
やはり4サイクルエンジンにとって【オイル=血液】です。
良いオイル。適したオイルをマメに交換してくことで、トラブル発生率は最小限に抑えられると思います。
今回は、シリンダーも使用限度を超えていたため新品に交換しました。
けれども、それ以外は全て続投可能でした。
ミッションは、ドッグ&ホールも傷みは走行距離を考えても良く、歯当たりも悪くなかったです。
クランク軸はそれなりに回転筋は見えるものの、爪や指に引っかかるような物ではなく、
コンロッドも小端部の焼け色はあるものの、焼き付きの兆候も無く曲がりも無かったので、続投です。
メタルは基本的に毎回交換しますが、今回は今までのR25の中でも非常に良いアタリでした。
R25のエンジンをメンテしている人ならば、毎回ひどいメタルの状態を目にしますが、
「その中で」一番良かったかな。
動弁系も「バルブシートカット&擦り合わせ」は行いましたが、バルブもバルブスプリングも続投可能でした。
*バルブスプリングは、スプリングテスターを使って全数をチェックして、新品対比で交換サイクルを決めています。
バルタイもバルクリもバッチリ決めて、完成です。
まだ寒いですが、時間をかけて慣らし走行して「良いエンジン」に育ててくださいね。
明日も頑張ります。
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