
KTM RC250 レーサー化エンジンメンテナンス 完了しました。
この車両は、サーキット走行専用車両として「エンジン製作」「ECUコントロール」をメインとした、レーサー化・マシンセットアップの御依頼で製作しております。
部品調達や各調整に時間を要しましたが、なんとかエンジンメンテナンスが完了しました。
組込みやバラシには、特殊工具も何点か必要でしたが、
国内在庫もなく、海外発送もコロナの影響でいつ入ってくるか判らない状況でしたので、
全て手持ちの物を加工したり、自作したりして新規の物は購入しませんでした。



このエンジンは、KTM本社が監修しているものの、元はインドのBajaj Pulsar200をベースとしており、
当初はイロイロあったエンジンですが、2016年や2017年型で少しづつアップデートされ続け、
今回も部品を購入すると、変更があったりと熟成を重ねてきている様子です。
基本的には、単気筒にありがちな「縦割り左右ケース」なのですが、
メインジャーナルがボールベアリングではなく、CBR250Rのようなプレーンメタルジャーナルによるオイルフローティングだったり、CBRですらニードルベアリングだったコンロッドもプレーンメタルで、コンロッドは「ナットレス」の締め付け構造をしています。
それ以外の、バランシャーやミッション軸は普通のボールベアリング支持です。
また、ピストンシャワー以外にもミッションやカムのフォローなども「シャワー潤滑」で、
エンジンの軸潤滑用のオイルポンプとは別に、シャワー潤滑用のオイルポンプが別途設けられており、
なかなか独特な設計思想です。

クラッチは、安定のFCC製アシストシステムで構成されており、
定番のスライドシム追加とスプリングを新品に交換して、パワーが出ても滑らないよう対応しています。
コレで滑るようならもっとシムを追加しますが、シャーシ測定まで様子見です。

ピストンはオーソドックスな、鋳造ピストンです。
パッと見た感じでは、KLX250やNINJA250SLのようですね。
リングは走行距離に妥当な感じでしたが、スカート側面は比較的良好な印象です。
それでも、パワー負けしないように、とりあえず新品に交換しました。

動弁系は、パッと見て直打に見えますが、実はDLCコーティングされたフォロワーによる、
ロッカーアームヘッドになります。



性能の要であるヘッドのモディファイは、
燃焼室=面研による圧縮比アップと、バルブ周辺の陰になる部分をカットして形状を整えています。
吸気ポート=バルブガイドカットと形状修正、インジェクター周辺の形状変更+スムージング加工。
排気ポート=陰になる部分のカットと集合部の鋭角化、左右ポートの形状を整え、スムージング。
元々の鋳肌がザラザラなので、かなり削っても巣が見えているところがありますが、
下顎はむしろ、そのザラザラの鋳肌を有効活用していますし、
削り過ぎると上顎の流速が遅くなるので、適度な大きさにしております。

バルタイ調整は、カムスプロケット側を少しづつ削ってレース向きのタイミングに調整します。
面研もして、チェーンも走行距離で劣化するのに、そのままってのはナイすね。
タペクリは日本車にはない独特のサイズと形状でしたが、あえて社外の物に交換しました。

スモールKTMあるある ですが、ボルト類の精度もクオリティも低いので、
ケースボルトもカバーボルトも、日本製のニッケル鍍金ボルトに交換しました。
ステンレス製のボルトは、アルミケースを傷める割に限界を超えると伸び続けてしまうので、
私個人では、殆どエンジンボルトには使いません。
SCMスチールの、精度の高いニッケル鍍金です。
雨天が多い日本で、ガレージ保管だとしても湿気は立ち上がるので、ユニクロや酸化クロムよりも、ニッケル鍍金の方が長持ちしますし、見た目は「鍛造チタンボルト」とよく似ているので、個人的によく使いますww
これから、エンジン搭載する予定ですが、冷却水通路の変更とエアクリーナーボックスの追加工、
マフラーのA/Fセンサーボス取付け、水温センサー取付け、
インジェクター洗浄が終わったスロットルボディの組立てと、まだまだやること満載です。
ECUのセットアップとコントロールは、年明けにバニーズマシンのNob姉を召喚する予定ですが、
その前に、純正ECUで起動確認まで進めます!!

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