今年の「2022 鈴鹿8時間耐久ロードレース」には、チーム名がエントラント中いちばん長い、
#99 「ADVANCEMC&FOCCLAYMORE EDGE with DOGHOUSE」様より参戦しました。
チームの母体は、宇都宮のバイクショップ「アドバンスMC」サンですが、
レース車両のメンテナンスは、メインメカの五十嵐さんが勤める浜松のバイクショップ「EDGE」サンで行われ、エンジンは磐田のSUS441で行われている混成チーム
そのアドバンスMCチームから参戦する眞鍋君が、今年の2&4で「鈴鹿8時間耐久レース:トライアウト(参戦権取得レース)」で、最終枠にギリギリ滑り込んで、そこから一気に参戦計画を監督が練り上げ、
各方面の多大なる応援と御協力があって、遂に鈴鹿8耐の大舞台に立つことができ、
予選40位/45台中、決勝:総合21位 EWCクラス:17位 SUZUKI勢では、上位4位という成績を収めることが出来ました!
参戦ライダーは、世界選手権はもちろん、全日本選手権もスポットでしか参戦していない
生粋の「鈴鹿サンデーライダー」です。
眞鍋将弘 M.MANABE
岩谷圭太 K.IWATANI
左村英祐 E.SAMURA
コロナ渦で8耐が行われていない時も、鈴鹿サンデー:インターJSB1000/ST1000クラスに参戦し、
それぞれが「鈴鹿8耐」を目指して、鍛錬を重ねていた3人です。
さまざまなレポは、チーム本隊の皆様にお任せするとして、私は自分の立ち位置から見た備忘録を書き留めます。
エンジンは、今回はチームマネージャーとして参加していますが、昨年までチームのライダーとして参戦し、
過去に岩谷選手と8耐を経験した「尾崎選手」が昨年のNGK杯まで使っていたエンジンをリフレッシュ。
1度SUS441でメンテナンスしており、距離も時間も知っているのですが、
当初から「ガチなスプリント仕様ではなく、耐久を見据えた仕様で」と監督からリクエストされており、
分解して見たところ、各部品の使用時間は長いものの、非常にバランスの良い焼けとアタリをしていて、
今回の耐久用エンジンとして十分に使用できると判断。
バルブやピストン、各メタルなど消耗品と呼べる部品は全て新しいものと交換しつつも、
尾崎号としてのスペックは踏襲して、耐久用エンジンとしました。
公開練習等で慣らし走行を行ったものを、ウイークに入る前にチェック。
まだ慣らしが少なく、エンジンが「若い」ことを報告し、火曜日の走行で距離を進める計画に。
月曜日、未完成だったお客様のエンジンを組み上げ、クロネコヤマトに持ち込んで、そのまま鈴鹿に出発
チームはほぼ設営が終わっており、私は与えられたスペースにテーブルと工具箱を設置させてもらって、終了。
火曜日、朝6時宿を出発。
今日は、T‐カーと本番車を使ってライダーセットの擦り合わせ。
走行を終えたマシンのチェックしたスタッフより、ヘッドカバーからオイルが滲んでいると報告。
前回のチェックで、ビードにオイルが残っていたか?
ヘッドカバーを開け、タペクリとバルブをチェックして、トラブルではない事を報告して、
多めに液体ガスケットを塗って組み付け。
走行後のチェックでも問題は無かったが、ちょっとライダーがナーバスになっていたので、失敗だったな。
慣らし走行も十分に行ったので、ここで本番エンジンは「温存する」ということで、
エンジンを一旦降ろして、トランスミッション、クラッチ、タペクリチェックを行うことに。
エンジンを降ろしてもらって、エンジン台に積んで、ココからが私の本番。
マネージャーの尾崎さんと私以外は、ライダーもスタッフも宿へ帰ることに。
暑い中、2台の車両を転がしていたのだから、みなヘトヘトだ。
私はこのタイミングのためにチームスイートやピットルームで休ませてもらっていたので、
集中して作業ができ、22時過ぎには完成。
水曜日、私だけ少し長く休ませてもらって、朝7時30分宿を出発
平日なので出勤渋滞にハマり、サーキットには8時半過ぎに到着。
ピットルームに着いた頃に、1回目の走行開始。
2回目の走行開始を見届けたスタッフが、今度は本番車のエンジン搭載を始める。
問題なくエンジンが起動し、走行の準備を進める。
ただ、温存の予定だった本番車だが、足回りのチェック等で走らせることになり、
思っていた以上に走行量が多いなと感じた。
木曜日 この日は、車検の準備と対応なので、私の仕事はほぼ無し。
FIM公式ガソリンのPANTAガソリンが強烈な臭いを発するので、成分も異常なんじゃないか?とい疑念から、
給油装置の膨潤・漏れチェックをPANTAガソリンで行う。数時間放置も漏れなしOK.
この頃から、なんとなくの流れで私がガソリンの計量・給油準備を行うことに。
金曜日。いよいよ公式予選で、朝5時出発
眞鍋君も13秒台、圭太さんも13秒台と順当にタイムをクリアして、佐村さんの番になったあたりで天気がアヤシくなり。。。
雨で足元をすくわれ転倒!!…他のチームも転倒やピットインでまともなタイムが出ていない。。。
車両が戻ってきたら、EDGEの土方さん五十嵐君、中澤さん、マイちゃんらが急いで修理を行う。
残りのメンバーで、眞鍋君・圭太さんが乗る本番車の準備を進めていく。
眞鍋君、圭太さんも順当に2回目の予選を終え、いざ佐村さんの出走前になると、またしても雨が!!!
懸命に走るも、生憎のなコンディションのなか微妙なタイムで、
みな「ライダーレッド(第3ライダー)の予選は、一体どうなるんだろう??」という不安と、
すぐ「ナイトセクション(夜間走行練習)」があり、そこで【タイヤ交換・給油練習】を行うことに。
3人のライダーが1~2周でピットインを繰り返し、慣れと粗を出していった。
ナイトセクション終了後、再び「エンジンを降ろして、最終チェック」の要請
今回は、今日中にエンジンを降ろしておいて、朝イチからメンテナンス作業をスタートさせ、
4耐が終わった、14時15分~フリープラクティスで「決勝に向けての最終チェック」を行うことに。
ナイトセクションが終わってミーティングして、20時過ぎにスタートしたが22時までにエンジンを降ろし、
エンジン台に載せ、周囲の片付けと掃除を行って終了した。
土曜日 エンジン担当の私、本番車担当の土方さん・五十嵐君らと、宿を朝5時に出発
今回は、火曜日に既に経験した作業環境なので、サクサクと作業が進む。
トランスミッション、シフト関係、タペクリチェックを行い、スパークプラグとクラッチを新品に交換
一通りチェックを行った頃に、ライダーはじめ残りのスタッフが到着
監督に一通り内容を報告して、続行可能である旨を伝える。
エンジン完成と共に、スグに皆でエンジンを搭載し、走行の準備を進める。
12時過ぎ、エンジンが無事に起動したのを見届けて昼食。14時の走行に備える。
走行開始して、ライダーが問題ないことを報告。
この走行でも、わずかなチャンスとばかり【タイヤ交換・給油練習】を行う
夜のピットウオークでも手順を確認しつつ【タイヤ交換・給油練習】を行う
フロントタイヤ:中上、足立
リアタイヤ:高井、五十嵐
ガソリン給油:中澤
給油サポート:私
サインボード・作業チェック:土方
消火器:尾崎
このメンバーで、平均・約23秒
ガソリンが安定するのをシッカリ待たなければ、20秒を切るスピードだ。
専門スタッフじゃないメンバーで、このウイークに入って手順をマスターしたにしては上出来だ!
何度か手直ししつつ、手順を確認して、この日も22時過ぎに終了した。
日曜日 いよいよ決勝日の朝
この日も朝5時に宿を出発 午前中のフリー走行に向けて準備を行い、
走行開始して、ライダーが問題ないことを報告。
この走行でも【タイヤ交換・給油練習】を行う
いよいよスターティンググリッドに向かう。
我々のピットは4番(1コーナーより)だけど、グリッドは40番手とかなり後ろ。
五十嵐君が何度も何度もマシンを確認して、スターティング補助の監督に手渡す。
スタートは、実績と経験を期待して、岩谷圭太さんに託した。
恒例のカウントダウンでスタートすると、見間違えか?というくらい圭太さんが抜群のスタート!
一気に30位近くを走行している!!
その後、すぐにセーフティーカーが入ったり、順位が入れ替わってピットインのタイミングもあって、
1時間経過後の順位は34位
無事に経過しているだけではなく、順位を6つも上げている。
その1回目のピット作業も、誰も焦ることなく、早くなることも遅くなることも無く、
練習どおりミスなく行って、佐村さんを送り出す。
昨日からの流れで、私が残ガスを軽量して、監督が現役時代からメカで支えていた高井さんに報告。
次のガソリンを入れてピットに向かうと、みな笑顔でモニターを見て観戦している。
佐村さんが、ほぼ0.8秒以内で安定して走行を刻んでいるだ。
様々なスキルのライダーとマシンが、様々なタイムで走っている耐久レースの途中経過にとって、
タイムを安定して刻んでいるライダーほど、安心してみていられる事ない。
2回目のピット作業も問題なく終わり、計量を行うと佐村さんは「燃費」も良い!
監督と荒木さんは、これで様々なシチュエーションの作戦を立てることが出来る。
初めての耐久の眞鍋君は、速い時もあれば遅い時もある。
自分のペースで走れるときはタイムが出るが、遅いライダーにつかまると、安全を考えてペースを落とさざるを得ない。
それほどエンジンパフォーマンスが高くないスペックでは、トップエントラントのような、トップライダーのような抜き方は出来ない。
自分の速いところ、前を走るライダーさんの苦手なセクションを見つけて抜くしかない。
しかも、後ろから速いライダーが抜きにかかるをの見極めながら。
ミニバイクの耐久レースも出た経験が殆ど無いと聞いていたが、監督やベテランの2人からのレクチャーを忠実に守っているのだろう。
無事に自分のスティントを走り終えた眞鍋君は、疲労感もあるだろうが、どこか「とりあえず、無事にやれた」安心感が表情に見えた。
予選では眞鍋君を上回る勢いだった圭太さんは、決勝では自分が思っているタイムが刻めていない様子だった。
それもそのはず、圭太さんのスティントはスタート時はグチャグチャで、
2回目は、2人ライダーのチームは別のライダーが走ることとなり、1回目とは条件が大きく変わってくるのだ。
そんな難しいコンディションを任せられるのは、3人の中で1番8耐経験値がある圭太さんしかいないのだ。
2度目のスティントを走る佐村さんへ、もうすぐピットインのサインを出す!というタイミングで、
再びセーフティーカーが導入!!
チームの中に「このタイミングでピットインさせるの?どうするの??」という空気が流れた時、
監督と荒木さんが、再び燃費を確認する。
「イケるね。佐村なら行ける。」
例えピットインのタイミングを過ぎたとしても、先の燃費計算通りなら、
仮に全開走行を続けたとしても、6周は余分に走れる。
セーフティーカーが入ってペースが落ちているので、燃費は更に伸びるので、9周や10周引っ張られても、
佐村ならガス欠の心配は無い。
戦略グループの2人の計算に、そんな確証が得られるくらい、佐村さんは2回目の走行のタイムも安定していたのだ。
GO!だ
みなセーフティーカーが解除されるタイミングを待つ。
待つ時間は長かったが、さほどガス欠を心配するような周回ではない時に解除。
スグにピットインのサインを出すが、佐村さんはシッカリと確認してピットイン
我々も落ち着いてピット作業を行い、セーフティーカー導入は我々に大いに味方した。
その後、最後のチェッカーライダー眞鍋君まで、慌てず。焦らず。卒なく。順当にピット作業とライダー交代を行った。
監督が「ドラマは要らない。何もなく、順当に終えることこそ、我々の求めるゴール」だと言った、そのままに。
みな無事にやり切った安堵感と、完走までたどり着けた感動に酔いしれている。
2度とないこの耐久の結果に満足げだ。
実績も何もない眞鍋君を国内ライセンスの頃から育ててきた、監督や他のメンバーは感無量だろう。
エンジンが最後まで持ってくれて、本当に良かった。
皆が喜ぶ完走を得ることが出来て、本当に嬉しい。
だが、まだなんだ。
次のレースの、その次のレースに参戦する、お客様のエンジンが待っている。
帰ってから、部品注文して分解の準備だ。
感動の続きは、打ち上げに取っておこう。
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