
昨日と今日で、グロムのエンジンが2機届きました。
4月に「鈴鹿:ミニモト4時間耐久レース」があり、続けざまに「もてぎ:DE耐」もあるため、
参戦されるユーザー様が、アレコレと準備を活発化してきたようです。
中でも、昨年発売された「HRC-GROM」と呼ばれる「新型グロムのレーサー」が
どこのサーキットでも、非常に多く見られるようになったみたいです。
サスのスプリング変更が可能で、専用ECU+サブコンで、誰でも「そこそこ速い」みたいですが、
やはり旧グロムのセッティングが進んでいる方達と比べると、少し遅いみたいです。
構造的には殆ど同じであることを考えると、やはり「サブコン」の影響が大きいんでしょうね。
そんなわけで、旧グロムのエンジンOHの様子を少しUPします。

先ずは、タぺクリ等をチェックして、分解・洗浄。
整備台の上でガスケット等を取り除いたら、1次洗浄台でグリスや油と一緒に8割がた洗います。
1次洗浄で洗い流せなかった小さなゴミや、洗浄液中に含まれる油分を2次洗浄台で洗い流します。
クラッチハウジングやトランスミッション等は、それでも微細なスラッジが残ってしまうので、
「超音波洗浄機」で30分~1時間ほど洗うと、驚くほど綺麗に洗浄されます。
ここまでの工程は、600だろうとミニだろうと変わりありません。
エンジンに小さいも大きいも無く、微細スラッジを取り除くという工程が必要なことは、変わりないのです。

クランクケースベアリングは、油がついていると判りにくいのですが、洗浄して乾燥させると、
摩耗・損耗具合が、手で触ってハッキリと判ります。
スプロケットの裏のベアリングは、まあ傷んでることが多いですね。
問題なければ、無駄に「クランクケース受け部」の勘合を緩くしたくないので、続投させることもあります。

ただ、残念ながら「生産時から初めて分解する」エンジンであっても、ケース受け部が傷んでいることがあります。
生産工程で、プレスでグイグイ圧入されちゃうからでしょうね。
もちろんベアリング側も傷んでいるので、こういった場合は無条件に交換します。

スタッドボルトも、サーキット走行した振動で緩んでいる箇所とそうではない箇所があるため、
1度外して曲がりや傷みがないことを確認して、ケースを合わせた後に組み付けます。

クラッチ周辺まで組みあがりました。
クランク側(画像右側)のプライマリーウエイトに、3本のボルトで固定されている三角形のプレートは、
「遠心フィルターの蓋」です。
オイルフィルターが無いHONDAミニエンジンですが、この部分でスラッジを遠心分離させているので、
レース前には1度でも蓋を開けて、スラッジを除去して下さい。
その際は、パーツクリーナーでジャブジャブ洗い流すと
「クランクシャフト:大端ベアリング」にゴミが流れ入ってしまうので、
ペーパーウエス等で拭き取るだけに留めましょう。

ピストンを組む段階になったら、エンジン整備台に載せて作業したほうが楽です。



シリンダーヘッドは、やはり4サイクルエンジン性能の要でしょう。
単にカーボンを除去しただけでは、他車の前に出ることはできません。
サービスマニュアルにも、シートカット・バルブすり合わせが何ページにも記載されていますし、
バルブタイミングを確認したり、タペットクリアランスを考えたりするのも、ストックエンジンでは肝になります。

ハイカムを組むことも、圧縮アップのガスケットに変更することも許されない、ストックエンジン
それでも勝敗を分けるのは、ほんの僅かな技術の積み重ねです。
ライダーさんが果敢に攻めたコーナーリングで、メカと一緒に考えたスプロケで立ち上がり、
試行錯誤を繰り返したサブコンのマップを駆使して、ショップさんが威信をかけたマフラーが唸りを上げるとき、
ほんの少しだけ、私の組んだエンジンが後押ししたのなら、嬉しく思います。