YZF-R6エンジンメンテナンス完了

#441

2018年03月16日 15:29




ST600に参戦されている、YAMAHA YZF-R6エンジンが完成しました。

昨年、新型のYZF-R6が発表され、本年度から新型レーサーが参戦してきますが、
このエンジンは昨年型の「1JS」という型のエンジンです。

新型と言ってもトラクションコントロールとデザイン面が大きな変更点で、
エンジン本体は、元々は2006年型の「2C0」という型から、少しづつ熟成されてきたので、
新型も今回の1JSも、大きくは変わっていません。

2006年型が登場した時は「10年先をいってる!」と評されましたが、
まさか12年も第一線で活躍できるとは、開発者もユーザーも思っても見なかったでしょうww


クランケは、昨年全日本選手権に参戦していたエンジンで、
地方戦とは比べ物にならないくらい高回転を多用しているため、基本的にフルオーバーホールになります。



フルオーバーホールすると言っても、街乗りのエンジンのようにレーサーは「カーボンてんこ盛り」
・・・なんてことはありません。

特に最近のsupersportsはインジェクションなので、トルクを出しつつも燃調がベストに近いため、
余計なカーボン付着も少なく、4気筒ともほぼ同じ焼けになっています。

ただカーボンが少ないからと言って「やることが無い」なんてことはなく、
逆に熱量がハンパないので、ヘッドの熱歪みやシートの摩耗度合いが顕著で、
レーサーエンジンのメンテナンスの肝と言えるのが、このシリンダーヘッドになります。



画像の赤丸印の部分、バルブシートの色を見て頂くと、
白く艶消しの部分と、真ん中に「茶色っぽく光っている」部分があるのが判ると思います。

白っぽいのが「擦り合わせ」でシート同士が触れ合っている部分ですが、
茶色っぽく見えている部分は、シートが当たっていない部分=隙間が出来てしまった部分です。

シリンダーヘッドの熱歪み、バルブシートの熱歪みでシートに隙間が出来てしまったエンジンは、
レース用エンジンなら、ミニバイクももビックバイクも同じように顕著に「性能悪化」に繋がります。

それに、チタンバルブを使ったエンジンではバルブ表面のコーティングが剥がれてしまうため、
続投可能なバルブを「コンパウンドを使った擦り合わせ」には用いることはできず、
シートカットを行ったあとの「擦り合わせ」には、『捨てバルブ』と呼ばれる擦り合わせをする為だけのバルブを準備して、メンテナンスに用いります。

先日行ったYZ450FやYZ250Fといった最近のMXレーサーも、動弁系はみなチタンバルブなので、
昔の空冷4発のように、コンパウンドを塗ってゴリゴリ・・・なんて出来ないんです。



YZF-R6は、バルブリテーナーも軽量の「アルミ鍛造品」で出来ていますが、
ハードなコーティングを施されていますが、コーティングが剥がれていたら「即交換」
とても高額な部品ですが、時期が悪いとスグに「メーカー欠品」になってしまいます。。。。



一番時間が掛かる動弁系以外は、メタル交換・ピストン交換・クラッチ交換が定番のメンテメニューです。




ワイヤーロックもシッカリ行って、腰下は完成。



オイルフィラーキャップは、SUS441オリジナルです。

ケース一体型なので、腰下が出来たらヘッドを組んで、バルクリ調整とバルタイチェックで完成です。

今シーズン地方選手権にデビューされるオーナーさんがライドします。

御用命ありがとうございました。




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