

赤いヘッドはヨシムラヘッドの100ccOPENカテゴリーのレースエンジン。
ノーマルカバーのエンジンは、ミッションやヘッドはノーマル縛りですが、
排気量115cc以内で『ポート加工+面研』等のヘッドチューンまでOKのレースエンジンです。
最近のストッククラスは、従来のNSF100トロフィーに加えHRC-GROMが主流となってきた印象が強く、
APE100や大人が乗るNSF100は、SP100やDE耐などに代表される、「ライトチューンクラス」のユーザーさんが徐々に増えてきているのかもしれません。
もちろん従来のOPENクラスのユーザーさんも走ってはいますが、耐久面やスペック費用が膨大で、
ちょっと予算的に苦しい・・・チューニングよりも走りの方が・・・・でも、フルノーマルは・・・
そんな方がユーザーの中心なのかな?と感じました。


赤いヘッドのエンジンは、クランクケースがガタガタだったので、新品ケースからくみ上げました。
オーナー様からのリクエストで、元々のケースにも加工してあった「オイルジェット」と、
ヘッドオイル供給量の増加、オイルクーラー追加用のメクラ埋めの加工を施しました。


ピストンは、弊社もお付き合いがある「RCハングアウト製:鍛造ピストン」です。
とても優秀なピストンで、変形も焼き付きも無かったので、カーボン除去とリング交換で続投。
シリンダーはホーニング目が無くなって縦傷が多かったので、再ホーニングしました。
それでも十分に性能を発揮できるクリアランスを確保しております。
そして、オーナー様から「オイルから金属粉が・・・」と指摘された原因は、
なんと「カムチェーンブッシュ」の破損でした!
今までガタガタになったので交換したり、切れたので交換・・・という事はあったのですが、
切れる前にブッシュが小さく剥離しつつ破損していく過程が判って、良かったです。

シルバーヘッドのエンジンは、ヨシムラ製の「ノーマルヘッド用ピストン」&シリンダーです。
このオーナー様は定期的にメンテナンスに出していただけるので、トラブルは1度も無いのですが、
このKITを組み込む際、ヨシムラ製ベースガスケットで組み込むと、
「クランクベアリング」や「コンロッドベアリング」がヘタって来たら、ヘッドとピストンが当たるというトラブルをけっこう耳にします。。。
そのため、当初はSTDベースガスケットで組んでいたのですが、やはり性能はメタルガスケットのほうが良いみたいで、2回目以降はヨシムラガスケットを使用したのですが、やはりスキッシュエリアには「石食い」の痕跡や「カーボンタッチ」した跡が残っていたため、今回はピストントップのスキッシュエリアを僅かに旋盤加工でクリアランスを設け、石食い対策としました。
画像ではガッツリ削っているように見えますが、実際は0.3mmも削っていません。
スキッシュエリアのみ削ったので、圧縮比にもそんなに影響はないでしょう。
こういった性能アップのチューンだけではなく、性能と耐久性+「安全に楽しめるエンジン」に仕上げることも、エンジン担当者の責務かと思います。
STクラスはもちろん、SPクラスでは加工が許されないクラスでは安全を確保するのは部品交換しかないのですが、それでも続投か否かの見極めは、オーナー様の予算も含め大事な部分です。
御依頼・御用命ありがとうございました。