車体ごとセットアップを御依頼されている、2018年型Ninja250のエンジンOHが完了しました。
じっくりお時間頂戴していたぶん、かなり細かい事まで判ったので、貴重な勉強をさせて頂きましたね。
オーナー様には感謝です。
カムプロフィール含め、動弁系の仕様はそれまでのK型やL型とは違い、
いわゆる燃焼に関する法律は、ZX-6Rと同じ考え方をしている。
これは、かなり面白い。
どーせカワサキの事だから、400共通化と既存システムの組み合わせで作ったのだろうと思ったけど、動弁系に関する考え方も補器類の駆動の方法もガラッと変えてきた。
ある意味「別物エンジン」なのだが、雑誌で目にする「イロモノ機構」があるわけではないので、
「パッと見てショボい。」と感じる人も多いだろう。
けれど、よく見て調べれば調べるほど「可能性があるエンジン」だという事が解るんすよ。
そーゆー部分が、4サイクルエンジンを触ってきた人間からすると「面白い」と感じるのです。
バランサーに取り付ける、薄く大きなW/Pアイドルギア
それをインナーに入れちゃうところが、面白いww
左がL型 右がP型
新型になったけど、ローターの取り付け位置と、プライマリーギアの位置は同じだ。
バランサーアイドルギアは内側に追い込んだけど、カムギアは外に追いやり、
新規にW/Pアイドルギアを取り付けた。
以前は、クラッチハウジングの奥に取り付けたギアで、オイルポンプ・W/Pを駆動させていたのだが、このシステムの方がロスが少ないと判断したのか?それとも単に、クラッチの飛び出しを減らしたかったのか?? 独特だ。ww
クランクウェブの形状は、L型は円盤型だがP型は完全にハンマー型
ウェブの厚みは若干だがP型が厚く、メタルの大きさもK型よりも幅広で径も大きい。
このへんは400と共通化した背景が大きいが、ならば400も見てみたいですよね。
組立て始めると、やっぱバランサー入ってるお腹が大きいっすねww
それ以外は、割と見慣れた景色です。
このオイルパンの形状や、ボルトの多さがZX-6Rっぽいww
クラッチの径はL型よりも小さくなっているが、P型はスリッパー付きクラッチのメリットとして、
厚み違いのスチールプレートの設定がある。=バックトルクの効き方をコントロールできるのだ。
スプリングもL型より強化されているが、やっぱり強化スプリングで設定変更できたら嬉しい。
ピストンはL型の物に酷似しているが、バスタブが大きい。
燃焼室は鋳造ながら、燃焼の考え方をL型やK型と変えてきた。
これは、ポートの高さと向きが関係していて、このへんも現代的というかZX-6Rの考え方に沿っていると感じる部分なんです。
ただ、バルブ径は予想していたよりも小さい。
あ、単純に径だけ大きくしても意味は無いんだけれど、
だからこそ、単純に大きくしてくるのだろうな・・・と思っていた気持ちを、裏切られたのだ(笑
見慣れた景色。
4.5mmの安定したステム径は、ガイドとの相性も良く、爆発圧力に耐えうる丈夫さを持っているので、
ステム径4.0mmのCBR-RRのように、バルブガイドが消耗してきたリ、ステムエンドが広がって抜けてこなかったり、コッターがリテーナーに噛み込むとか、タペットシムが殆ど「使い捨て」になるような華奢さは見られない。
*CBR-RRは、ステムエンドがタペットシムに食い込んで凹むことが多い。=使い捨て(爆
そして、カムキャリーはL型までとは比べ物にならないくらい頑丈で、精度が良い。
この「カム軸の精度の良さ」は、長くNinja250のエンジンを触ってきた人間からすると、
「おい!どーしたカワサキ!これじゃ、ヤマハと同じくらい精度が高いぞ!」と突っ込みを入れたくなるww
*それくらい、L型まではヘッドとカムキャリーの精度が悪かったのだ。
バルブタイミングは、Kawasakiにしては珍しく「規定値どおり」
ここから「レース向きのタイミング」へと合わせ込むのが大変なんだが、
今回は、アッサリと狙いの数値に収まった。 バルタイの女神が降りましたねww
タペットシムも今までは「下限ギリギリ」だったのを、上限付近に設定してきた。=厚みが厚いってこと。
これは嬉しいね。
これなら、数回「シートカット&擦り合わせ」しても、十分に標準範囲内で狙い値に出来る。
「まさか、そこまでレースユーザーの事考えて作ってくれた?」と思わず笑みがこぼれる。。
あれ?誰も共感しない?? ww
けっこうね~シートカット続くと、シムが下限を切るんじゃないかって、ドキドキするんですよ~(笑
2次エアカバーは、いつもお世話になっている「K&T」様の物を組んでいます。
よく中のリードバルブを取って、数ミリの板を張り付けている人がいますが、
排気の圧力って、案外すごい勢いなんですよ!
前に、この板が排気の勢いで割れているエンジンが届いたことがありますので、
ここは、必ずリードバルブは取り付け、丈夫な切削物のカバーに交換して下さいね。
そんなヘッドカバーを組んで、完成。
P型エンジンは、左右を貫通するシャフトが一切ないエンジンな為、
このP型のために「後付けブラケット」を製作して、エンジン台に載るようにしました。
ぶっちゃけ、隣の試作屋さんに加工を依頼したので「まあまあ高価なブラケット」になりました(爆
エンジンの搭載も、この新型ニンジャは独特です。
後からの取り付けには、位置決めカラーがありますし、ヘッドは前後左右で計4か所のボルトで留まってます。
画像が暗いのは、台風24号による「長期停電」の為です。
台風一過で晴れたので、工場内も写真でみるより明るかったですよww
お客様がオーダーした、BEAMS製レーシングマフラーです。
一般的にはスクーターからビックバイクまで「JMCA規格品」を製作販売するメーカーさんとして知られていますが、過去には自社チームで鈴鹿8耐や全日本にもエントリーした実力派で、今回のような「レーシングマフラー」はホームページには一切掲載されていませんが、岡山国際サーキットではコースレコードもポールポジションもゲットしたことがある、優秀なマフラーメーカー様です。
JMCA規格品のマフラーが「まあまあエエの出来ましたよ」と聞いていましたが、
そこから更に改良を施して、レース用に仕立ててくれた逸品です。
このマフラーの性能を生かすべく、吸気系にも手を加えましたが、今夜はこの辺で。